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大手メディアが黙殺する、ヤマトHD「水増し請求」

現代ビジネス



告発者が90分にわたって激白

<私が、「水増し請求」に気付き、是正措置を取ったのは2010年だから今から8年前。

それから何度も、いろんな形で警告しましたが、会社は聞く耳を持たない。

刑事告発して警察の手に委ねることにしました――。>




東京地裁に置かれた司法記者クラブで会見を開き、こう衝撃の告発をしたのは、

ヤマトホームコンビニエンス(YHC)の槇本元(はじめ)・元四国支店長(66歳)である。




YHCは、宅急便で知られるヤマトホールディングス(ヤマトHD)の引っ越し部門。衝

撃だったのは、「水増し請求」が恒常的に行われて、それを会社は知る立場にあったのに放置していたこと。

それが運送業のなかでも信用力の高さで知られるヤマトHDで発生していたことである。





ただ、マスメディアがこの会見を大きく取り扱うことはなかった。

『赤旗日曜版』が、7月1日号で、愛媛県東部の工場地帯にある「ルネサスエレクトロニクス」子会社の

社員寮で行われた「荷物量を5~10倍、料金を4倍以上、過大請求している」(槇本氏)という事例を

もとにスクープ報道。





会見がその翌日だったせいもある。

他紙の「後追い」を嫌うマスメディアの習性はわからなくはないが、これは伝えておくべき問題だろう。




そこで私は、四国の高知市から上京していた槇本氏が、夜行バスで帰る直前、90分にわたり話を聞いた。

そこで判明したのは、告発を受け入れられないばかりか、定年延長の職場ではイジメのような

仕打ちを受けた槇本氏と会社の戦いのドラマもあった、ということだ。




「なんで本社に通報するんだ」

私がヤマトHDに対して行った3点の質問と同社の回答は後述するが、会見を受けた記者からの

問い合わせに対し、ヤマトHDの回答は統一していた。

「一部に誤った請求があった事実は確認しており、今後、速やかに調査を進めます」




槇本氏の告発は資料を基にしており、しかもそれを裏付ける実況見分のような赤旗報道があっただけに、

「一部」という表記で認めざるを得ない。

だが、槇本氏の8年に及ぶ訴えを無視し続けたうえに、「今後、調査を進めます」というのはいかにも不誠実だ。






槇本氏が、発端から振り返る。

「10年当時、私は四国法人営業支店長として、引っ越し作業を行うのではなく、法人を獲得するのが

仕事でした。






の顧客になってくれたのが東芝系列企業でしたが、そこが愛媛と神奈川間で行った従業員の移動の際、

水増しを行っていたのに気付き、本社の内部通報窓口に連絡しました」





この時の処理の拙さが、「水増し請求」の蔓延につながった。

誤りを認め、過大請求分の約400万円は返金するのだが、会社側に是正の意思はなかった。




「私の上司に当たる四国を統括する支店長から、『なんで本社に通報するんだ。内々で済む話じゃないか』と、

怒られたんです。

それが会社の意思でした。



だから当該の支店長、営業所長などは処分を受けず、逆に社員の間に『水増ししても構わない』

という機運が広がった」(槇本氏)




社内の人間であれば、「水増し請求」を見抜くのは簡単である。

会見で使われた資料を例にするが、伝票番号690-5374-7372の「請求書」は顧客に提出されるもので、

これは神奈川県横浜市から愛媛県西条市への引っ越し作業が総量2トンで合計金額が18万5325円となっている。




その裏についているのが、顧客には渡さず会社側だけが把握する「作業連絡票」で、

伝票番号が同じなので同じ顧客の荷物。

ただ総量は圧倒的に少なくボックス数が「2」となっている。




ボックスとはYHCの専用荷物入れで、300キロから600キロを収納できる。

それが「2」ということは、最大でも1トン超。




それをもとに槇本氏が計算しなおしたのが手書きの数字で、本来なら8万1690円が正規の値段で

10万円超が水増し請求分である。



イジメのような勤務体系

引っ越しを受け入れる支店、営業所は、受け入れ作業の関係からボックスの個数や家財の量を

把握しなければならない。




だが、「請求書」との間に差が生じるのは計算しなければならず、だから

「この帳票は使い終わったら必ずシュレッダーにかけてください。

裏紙などの二次使用は絶対禁止!」というただし書きがついている。






槇本氏が解説する。

「引っ越しには、出発の支店である『発作業店』と、到着地の『着作業店』が関わり、

支店同士で実際の荷物量を確認するための『作業連絡票』は必要です。




でも、『発作業店』で行われている水増しが『着作業店』にもわかり、それが許されているから、

その支店でも行うようになる。

『作業連絡票』は、結果的に顧客をだますYHCの小道具になった」





法人営業支店が廃止され、槇本氏は高知支店長となるが、自身の支店が発作業支店になった時の

「水増し請求」は禁じたものの、着作業店となった時は、注意を喚起するにとどめた。

禁止の権限はない。




12年11月に定年を迎え、定年延長で17年11月まで乗務員として勤務。

権限はまったくなくなり、杓子定規に「水増し請求」を注意喚起してきた過去から、

イジメのような勤務体系を組まれるようになった。




その間も槇本氏は、自分の関われる範囲で資料を収集しつつ、個人の立場で高知県労働組合連合会、

自工総連高知地方連合会などの労組に加入、会社に注文を付け続けた。






「組合から市原厚史社長(当時)宛てに何度も申し入れ書を送り、交渉を続けました。

15年11月18日、16年7月21日と、こちらからは私と労組幹部、YHCからは統括支店長などが出席、

話し合いの場を持っています。




私の処遇と水増し請求などのコンプラ問題が議題で、水増し請求問題は解決しないまま、

現在に至っています」(槇本氏)




愛社精神と恨みが、ないまぜになった告発。

それが8年に及び、交渉を続けてきた過去もあるのだから、ヤマトHDのいう「今後の調査」は通用しない。
筆者の取材に応じる槇本氏




ヤマトHDには、以下の3点を質した。

① 8年前の告発をキチンと処理しなかったことが、「水増し請求」の蔓延につながったという

主張をどう思うか。




② 社長宛に文書が送られ、労組を交えた話し合いは繰り返されており、会社側は「水増し請求」

の事実を掴んでいた。

これまで放置していたのはなぜか。



③ 槇本氏は刑事告発の準備を整えている。

会社側は、「水増し請求」した人間の個人犯罪と捉えているのか、あるいは組織犯罪か。






ヤマトHD広報は、個別にではなく、次のようにまとめて応えた。

「ご指摘には一部当社が把握している事実と異なる点、また解釈の相違する点がありますが、

現在調査中のため、現段階での回答は控えさせていただきます」




今後の対応に注目するほかないが、ルネサスエレクトロニクスで示されたように恒常的な

水増し疑惑が消えない以上、解明は槇本氏の告発を受けて捜査する警察に委ねたほうがよさそうだ。

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